あらためて日銀の物価観を考えてみる
2パーセントインフレを2018年4月までに実現するという目標で、異次元金融緩和を続けてきた日銀が、正式にこの目標の先延ばしに言及しました。
奇を衒うマスコミは、「異次元金融緩和の事実上の敗北」などと書いたりしていますが、もう少し本格的な考察をすべきだなどと思ってしまいます。
白川日銀の最後の頃には 多少の政策変更が感じられましたが、 黒田日銀になって、日銀の物価観は大きく変わりました。そしてこれが、日本経済の大転換を齎したことは、矢張り決定的に重要です。
それまでの日銀は「物価の番人」という立場を極端に重視し、プラザ合意後の異常な円高で、デフレ傾向が明らかな中でも、「物価は上がらない方がいい」とかたくなに考えていたフシがありました。
黒田日銀は、浜田宏一氏などの主張のように、「アメリカ並みの超金融緩和を行い、たとえ物価が上がっても円レートを正常な水準に戻す」ことを目的としたようです。
そして現実に打ち出されたのは、国債買い入れを中心に異次元金融緩和、ゼロ金利政策、物価上昇目標2%などでした。
当時は、日本に円高を強いたアメリカが「円安誘導は怪しからん」という可能性も危惧、「やっていることはアメリカと同じ(物価誘導目標も)」と言えることが重要だったように思われます。
結果は大成功で、二度の金融緩和政策(2発の黒田バズーカと言われた)で$1=¥80は$1=¥120になり、日本経済は「失われた20年」を脱出しました。
安倍さんはこれを、アベノミクスの大成功と喧伝したのはご記憶の通りです。
アメリカとは経済の環境もあり方(国民意識)も大きく違う日本で、アメリカと同じ2%インフレ目標を掲げたことも、当然アメリカを意識してのことでしょう。
私は、2%インフレ目標というのは、金融緩和の口実といった意味も大きかったと思っています。アメリカも2%と言っているのだから、日本も2%になるまで金融緩和は続ける、という事で、円高への逆戻りを阻止するといった主張が可能になるわけです。
その意味では、昨今のように 「異次元金融緩和」を続けても円高方向に振れる可能性が出てきたという状態では、現実問題として、2%インフレターゲットに固執する意味は次第に薄らいできたのではないでしょうか。
一方、国債の35%近くを日銀が保有するという状態は将来の金融正常化への道をますます難しいものにする懸念が高まっています。
健全な日本経済の成長維持のための過度の円高阻止については、先読みをされ、効果の薄れたる金融政策ではなく、 よりまともな対応策が必要という事でしょう。
「有事のドル」から「さしあたって円」という投機筋の通貨選択の変化の背景には、アメリカの万年赤字と日本の万年黒字があることは明らかです。
そして日本の万年黒字の背景には「極端な消費不振」、そしてその背後には、進行する格差社会化と現政権に政策に対する 金融政策のできることには限りがあることをアベノミクスが理解しなければ、日銀の苦悩は続くばかりでしょう。
2パーセントインフレを2018年4月までに実現するという目標で、異次元金融緩和を続けてきた日銀が、正式にこの目標の先延ばしに言及しました。
奇を衒うマスコミは、「異次元金融緩和の事実上の敗北」などと書いたりしていますが、もう少し本格的な考察をすべきだなどと思ってしまいます。
白川日銀の最後の頃には 多少の政策変更が感じられましたが、 黒田日銀になって、日銀の物価観は大きく変わりました。そしてこれが、日本経済の大転換を齎したことは、矢張り決定的に重要です。
それまでの日銀は「物価の番人」という立場を極端に重視し、プラザ合意後の異常な円高で、デフレ傾向が明らかな中でも、「物価は上がらない方がいい」とかたくなに考えていたフシがありました。
黒田日銀は、浜田宏一氏などの主張のように、「アメリカ並みの超金融緩和を行い、たとえ物価が上がっても円レートを正常な水準に戻す」ことを目的としたようです。
そして現実に打ち出されたのは、国債買い入れを中心に異次元金融緩和、ゼロ金利政策、物価上昇目標2%などでした。
当時は、日本に円高を強いたアメリカが「円安誘導は怪しからん」という可能性も危惧、「やっていることはアメリカと同じ(物価誘導目標も)」と言えることが重要だったように思われます。
結果は大成功で、二度の金融緩和政策(2発の黒田バズーカと言われた)で$1=¥80は$1=¥120になり、日本経済は「失われた20年」を脱出しました。
安倍さんはこれを、アベノミクスの大成功と喧伝したのはご記憶の通りです。
アメリカとは経済の環境もあり方(国民意識)も大きく違う日本で、アメリカと同じ2%インフレ目標を掲げたことも、当然アメリカを意識してのことでしょう。
私は、2%インフレ目標というのは、金融緩和の口実といった意味も大きかったと思っています。アメリカも2%と言っているのだから、日本も2%になるまで金融緩和は続ける、という事で、円高への逆戻りを阻止するといった主張が可能になるわけです。
その意味では、昨今のように 「異次元金融緩和」を続けても円高方向に振れる可能性が出てきたという状態では、現実問題として、2%インフレターゲットに固執する意味は次第に薄らいできたのではないでしょうか。
一方、国債の35%近くを日銀が保有するという状態は将来の金融正常化への道をますます難しいものにする懸念が高まっています。
健全な日本経済の成長維持のための過度の円高阻止については、先読みをされ、効果の薄れたる金融政策ではなく、 よりまともな対応策が必要という事でしょう。
「有事のドル」から「さしあたって円」という投機筋の通貨選択の変化の背景には、アメリカの万年赤字と日本の万年黒字があることは明らかです。
そして日本の万年黒字の背景には「極端な消費不振」、そしてその背後には、進行する格差社会化と現政権に政策に対する 金融政策のできることには限りがあることをアベノミクスが理解しなければ、日銀の苦悩は続くばかりでしょう。